好酸球性鼻副鼻腔炎
◆ 治療の主軸は手術であり,術後も定期的なフォローが必要である.
鼻副鼻腔炎は俗にいう「蓄膿症」のことです.ちくのうと言えば,青っぱなを想像すると思いますが,鼻副鼻腔炎には,この青っぱなの蓄膿症と,近年増えているアレルギータイプの鼻副鼻腔炎があります.アレルギータイプの鼻副鼻腔炎を〈好酸球性鼻副鼻腔炎〉と言います.
院長は札幌医大在職中,厚生労働省の難治性疾患研究班(http://www.nanbyou.or.jp/entry/2043)の一員として,この好酸球性鼻副鼻腔炎の研究をしていました.札幌医大とその関連施設で手術を行った患者さんのデータをまとめ,全国から集まった同様のデータを元に〈好酸球性鼻副鼻腔炎の診断基準〉が出来上がりました.大学時代にやった大仕事のひとつで,好酸球性鼻副鼻腔炎はとても思い入れのある疾患です.
好酸球性鼻副鼻腔炎では,早い段階からにおいが分からなくなったり(嗅覚障害),鼻茸(鼻ポリープ)を合併,喘息を合併されている方が多いなど,従来の蓄膿症とは,症状などが違います.
治療法も違うので,従来の慢性鼻副鼻腔炎と,好酸球性鼻副鼻腔炎を見分けることがとても大切です.当院では,
1. 問診(患者さんから症状や既往歴などを伺う)
2. 視診(鼻の中をみる)
3. 鼻汁好酸球(綿棒で鼻水をとって細胞を調べる)
4. レントゲン,CT(鼻のどこに炎症が起きているかをみる)
5. 内視鏡検査(鼻の奥を観察する)
6. 呼気一酸化窒素測定(好酸球性炎症の程度を評価)
などで,慎重に診断し,できるだけ早期に治療を開始できるようにしています.
好酸球性鼻副鼻腔炎は,難治性,再発性の特徴から,難病に指定されています.
治療で重要なのは手術です.「治りづらいし再発するから手術をしなくて良いんじゃない?」と考えている先生もいるようですが,鼻の専門家の間では〈手術が治療の柱〉であることは共通の認識です.好酸球性鼻副鼻腔炎の手術は,従来のちくのう症の手術に比べると,難易度の高い手術です.きれいに,きちんと手術しないと,術後の経過がイマイチになることがあります.手術を希望された患者さんには,院長が信頼している〈鼻科手術の上手な先生〉を紹介しています.
手術だけで治れば良いのですが,術後も薬物治療する必要があります.継続して治療しないと,鼻茸が再発する可能性が高くなります(難病である所以).もし鼻茸が再発してしまったとき,2020 年 4 月からデュピクセントという薬が使えるようになりました.使用基準が明確に決められており,再発しても全員に使えるわけではないのですが,ものすごく効きます.鼻茸も縮小しますし,多くの方で嗅覚障害が治ります.
診断,手術,術後治療をきちんとやっていかないと,なかなか難しい病気です.